異素材とガラスの絶妙なバランスを目指す。アーティスト「佐藤幸恵」インタビュー


mizore galleryに作品をご出品いただいている立体アーティストにインタビューをする企画。今回は異素材とガラスを組み合わせた作品を制作する「佐藤 幸恵」さんにお話を伺いました。


佐藤幸恵プロフィール

 

2009  筑波大学芸術専門学群構成専攻クラフト領域ガラス分野卒業
2011  富山ガラス造形研究所造形科卒業
2012  Art Glass Solutions アーティスト・イン・レジデンス / シンガポール
2015-2017 坂東市ガラス工房秀緑勤務
2018 平成30年度ポーラ美術振興財団在外研修生としてポルトガルにて研修
リスボン大学 Master Glass Art and Science

現在東京都にて制作





アール・ヌーヴォーに魅了され、ガラスの道を志す



■アーティストを目指すきっかけはなんでしたか?

高校生の時に、たまたま地元の美術館でルネ・ラリックの展示を観たのがきっかけです。彼の作品はアール・ヌーヴォー様式が特徴的で、ガラス製の香水瓶や彫刻作品を見て、今までガラスはグラスなどのイメージしかなかったのですが、「こんな繊細な作品も作れるんだ」と興味を持ち始めました。

進路を決める際にガラス工芸ができるところとして筑波大学に進学し、ガラスを触り始めました。

筑波大学で制作していた頃は、主にキャストガラスを中心に、花瓶など今とは全然違う作風の作品を制作していました。筑波大学卒業後は、吹きガラスなどガラス工芸の他の技法を学ぶために富山ガラス研究所に進学し、造形科で色々な技法を学びました。本格的に作家を目指したのは富山に行ってからだと思います。


ガラスのサイズの限界を超えるため、空間をキャンバスに



■今の作風に至るきっかけはなんですか?

作風に関して自分の中ではそんなに意識していませんが、「気色」シリーズは、学校を卒業後に自分の部屋の中で制作できるものをと思い作り始めました。学生を卒業すると学校の設備が使えなくなってしまい、大きな作品が作れなくなってしまうので、例えガラスが小さくても、ワイヤーを使ってガラスの外側に表現の幅を広げればできることが増えるのではないかと思い始めました。

やってみたら意外とガラスが割れたりすることも少なく、ワイヤー以外にも金網など様々な素材を使うと色々な反応や表情があることに気づき、ずっと実験しながら作り続けています。


やっていることは抽象に近く、それぞれにストーリーがあるわけではないので、その分見る人が想像することで色々な見方が生まれるのではないかと思っています。

■「残片」シリーズについてはいかがですか?

「残片」シリーズは、土器や化石を使った作品シリーズです。元々古いものが好きで、縄文土器なども骨董市やメルカリで買ったりしています。そのかけらを使って、本当の形はわからないですが、欠けた先の形を勝手に想像しながら作っています。

佐藤幸恵《残片》

■制作で1番テンションが上がる瞬間はいつですか?

作品を窯から出す瞬間が一番面白いです。キャストガラスは、作品として形になるまでの時間が長いので、窯から出した瞬間は「ガラスになってくれた」という感動があります。また、作品の色やテクスチャなど、ガラスにどんな表情が出たのかがわかる瞬間も面白いです。


こだわりは考え抜かれた絶妙な色やバランス


■自分の作品の「特にこだわり!」というポイントはどこですか?

作品の色を考える時間が長く、型取りして色のついたガラスを入れるタイミングで1日中考えることもあります。

色の決め方は、データを見ながら昔の作品の色合いを拾ったりしていますが、やはり色見本があったとしても、最終的な色はガラスになってみないとわからないので、難しいところでもあります。

 

作品の形は、最初は入れ物のような形を作ることが多かったのですが、最近はあまりモチーフを限定せずに作っています。簡単なイラストを描いてそれをもとにすることもありますが、最終的にどう仕上がるかは最後まで自分でもわかりません。

ガラスを窯出しした後も、針金の角度や組み合わせる素材などでバランスを調整することで、「この形がいいな」と思えるところを探しています。バランスを調節するときも何時間も考えることもあります。


■立体作品の魅力はなんだと思いますか?

ガラスに関して言えば、ガラスは透けるので、内側の存在が見えることが魅力だと思います。ガラスの気泡や、中の色の移り変わりなど、他の立体作品だと見えない部分が見えるのは、ガラスの立体作品として魅力的な部分だと思います。

また立体作品だと、結合部分など鑑賞者には見えづらくてあまり意識しない部分にまでアーティストのこだわりを感じたりすることがあるので、そういう部分を見つけるとすごいなと思います。


■立体作家として大変だなと思うことはなんですか?

イメージを現実的に“もの”として実現しなくてはいけないというところです。特にガラスは重いので、作品を固定したり、土台を安定させたりなど、物理的に作品として成立させなければいけないということが大変です。



■作家としての今後の目標はなんですか?

今は土器などの古物や陶器とガラスを組み合わせた作品に取り組んでいます。
このシリーズの作品を増やして自分なりに発展させていきたいと思っています。

 

 



×

Call for Price

I agree to my email being stored and used to receive the newsletter.