色鉛筆と積層ガラスで切り取られる、どこか懐かしい青の風景。アーティスト「松村淳」インタビュー


mizore galleryに作品をご出品いただいている立体アーティストにインタビューをする企画。今回は板ガラスと色鉛筆で風景をモチーフにした立体作品を制作する「松村淳」さんにお話を伺いました。

 

松村淳プロフィール

1988 千葉県出身
2011 多摩美術大学 美術学部工芸学科ガラスプログラム卒業
2012-2016 白神ガラス工房(青森県西津軽郡深浦町)勤務
2016- 神奈川県にて制作活動中




色鉛筆×積層ガラスが生まれたきっかけ



■アーティストを目指すきっかけはなんでしたか?


きっかけらしいきっかけがないまま今に来ている気がします。大学でガラス工芸の勉強をして、4年生の時に就活をして企業に勤めようかなと思っていましたが、うまくいきませんでした。進路が決まらないままSpiralで卒業制作展に参加させてもらい、たくさんの人に見てもらう中で思っていたよりもいい反応がもらえて、手応えを感じました。これを機に制作して発表するということをもう少し続けていきたいなと思い、今に至ります。

卒業制作

 

 

■今の作風に至るきっかけはなんですか?


私は板ガラスを削ったところに色鉛筆で着彩し、それらを重ねていく方法で制作しているのですが、この作風は大学生の時に授業で作ったものがきっかけです。大学の自由課題で初めて技法やテーマの制限なく、自分で考えて作品を制作するという機会を与えられた時、何を作ったらいいのか毎日悩んでいたところ、授業中に海外アーティストが自由にガラスを解釈して制作しているのを見ました。その中に色鉛筆を使って彫刻を作っている作家さんを見て、それまでガラスに色鉛筆を使うなんて考えられませんでしたが、「それでもいいんだな、なんでもやってみよう」と思って色鉛筆を使い始めたのがきっかけです。

学生時代の作品。初めて色鉛筆と積層の方法を使った作品。



 

■風景のモチーフはどのように決めていますか?


一貫して風景の絵を描くというのは自分の中であるのですが、普段生活している中で洗濯物を干しながらベランダから見る風景や、散歩しながら見る風景、雑誌で見て素敵だと思う風景が自分の思い出の中にある過去の風景と似てると思った時など、暮らしの中で見つけた風景をモチーフにすることが多いです。

散歩中の風景。作品のモチーフのヒントになる。

 

 

色鉛筆とガラス、それぞれの特性を掛け合わせた表情がこだわり

  

■ご自身の作品の中で、特にこだわっているポイントはどこですか?


色鉛筆を使っているので、色鉛筆ならではの細やかで微妙な色合いと、ガラスの特性である光を通す・透けて見えるという特性が重なり合って、色鉛筆の微妙な色合いが光を通して見える表情にこだわっています。



■松村さんの作品は青のイメージが強いですが、色彩のこだわりはありますか?


夜が1日の中で一番好きで、静かで自分と向き合えたり、1日の中でほっと落ち着いて自分の時間をとれるので、そういうこともあって青っぽい作品が多いのかなと思います。

使っている色鉛筆の中でもやはり青の種類が一番多いです。芯が柔らかい色鉛筆だとしっかりガラスにくっついて光を通しにくくなったり、芯が硬いとサラサラとなるので光を通す発色になったりなど、同じ色の色鉛筆でも特性やテクスチャーの微妙な違いなどを使い分けながら制作しています。

作業中。色をつけているところ。

見る角度や、光と影によって印象がガラッと変わるガラス作品



■立体作品の魅力はなんだと思いますか?


やはり360度楽しめることです。立体作品は光が当たることで印象がガラッと変わるので、大きさにもよると思いますが、自分の掌に乗せて触ったりして愛でることができたり、角度によって自分の好みの楽しみ方が見つけられるのが立体作品ならではの魅力なのではないかと思います。


特にガラスは光を通すので、置く場所によって見え方が全然ちがいます。私はやわらかい自然光のもとが一番綺麗に見えると思うので、日光がたくさん当たる場所というよりは、室内でほどよく陽が当たるところで楽しんでいただけると嬉しいです。しかしそれだけではなく、過去のお客様の中には落ち着いた空間でこだわりの照明を当てて楽しんだりなど、自分では発見できないような楽しみ方をしている方もいてとても嬉しいです。

やわらかな自然光で見る作品。


■積層ガラスならではの魅力はなんだと思いますか?

 

工業製品のガラスならではの特性や現象が面白いと思います。

平行の線が重なっていく建築物のような構造の美しさ、角度によって変化する反射や屈折する現象を生かした表現ができます。

私の場合は絵を重ねられることが魅力的に感じます。ガラスに絵を描いて作品にする方法を探した結果積層ガラスに行きつきました。絵画的な表現と透明であるガラスの特性を生かした奥行きのある立体表現を両立することができます。さらに板ガラスの厚みを変えることで絵と絵の間隔を調整することができ、見せ方の幅が広がります。正面から見た時の印象と側面から見たときの絵柄が消えて構造が見える印象のギャップは積層ガラスならではの面白さであると思います。


積層の様子(正面)

積層の様子(横)

 

 

■立体作家として大変なことはなんですか?


360度気が抜けないところです。どこから見ても綺麗に作り込まなきゃいけないので、時間がかかります。

あとは、写真を撮るのが難しいです。1面だけでは伝わらないので、いろんな角度から作品を撮ったりしますが、サイズ表記をしても、実際見てみると思ってたサイズと違うなど、写真だけでは伝わりきらない部分は立体作品あるあるだとおもいます。

 

 

■作家としての今後の目標はなんですか?


今は子育てをしながら制作しているので、子育てとの両立が課題です。子育てを楽しみながら、コツコツ制作し続けたいと思います。

また、作品の内容としてずっと風景を一貫して作っているので、誰かに懐かしいと思ってもらえたり、ほっとしてもらえるような、自分の時間に戻って一緒に過ごせるような作品を作れたら嬉しいなと思っています。

 

 

 



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