“神は細部に宿る”を作品で目指したい。エキゾチックな笠間焼のアーティスト「須藤忠隆」インタビュー


mizore galleryに作品をご出品いただいている立体アーティストにインタビューをする企画。今回は無国籍なエキゾティズムの漂う陶芸作品を制作する「須藤 忠隆」さんにお話を伺いました。

 

須藤忠隆プロフィール

1983 茨城県笠間市の窯元「東風舎」の長男として産まれる。
2004 NHK デジタルスタジアム にてアニメーション作品「FACTORY'S DREAM」オンエアー。
 銀座・ギャラリーASK? 主催 "ASK? 映像際" にてアニメーション作品「digest」が久里洋二賞受賞。
2005   阿佐ヶ谷美術専門学校卒業。
2006   笠間市・space nico にて、”カサマ系日持ちキャラ展”に参加。
2007   小山・まちかど美術館 にて”ファイブ・バイブレーション”展に参加。
2008   高円寺・ギャラリー 工 にて”Blowing From The Forest~東風舎親子展~”
2009   阿佐ヶ谷・元我堂にて”森の友達展”
2010   代官山・アートラッシュにて”猫展” 水戸芸術館・アンサンブルズ・フェスにて、duny's cokeのメンバーとして演奏に参加。
2012   オリエント•エコー 手作り時計コンテストにて大賞受賞
2014   水戸・minervaにて個展”Magic Garden”
2015   新宿髙島屋にてうだまさしとの二人展「陶と木工展」
2017   新宿髙島屋にてkeicondo氏との二人展「笠間の風」目黒 chum apartment にて個展「遠国」
2019   茨城県陶芸美術館「いきもの狂騒曲 -陶芸フィギュアの現在-」に参加。日本橋髙島屋にてグループ展 ~カサマノマ・サ・カ~ 目黒MARUSEにて個展「魔法のひろば」

 


陶芸の産地、茨城県笠間市で生まれ育つ

 

■アーティストを目指すきっかけはなんでしたか?

 窯元の家で育ったので、小さな頃から粘土を触ったり、絵を描いたりするなど、ものづくりが好きでした。さらに、実家が陶芸の産地である茨城県笠間市なので、陶芸作家が身の回りに多くいる環境でした。ものを作ることが当たり前にある環境の中で育ったので、幼い頃からの環境による影響は大きいと思います。


他の備前や伊万里などの陶芸の産地が、大きな窯元で分業制で制作を行なっていることもあって制作者が割と職人気質なのに対し、笠間焼は個人作家が多く、デザイン、造形、焼きまで個人で行なっていることが多いので、職人的な技術ももちろん必要ですが、アーティスト的な作家性も求められます。そのため、笠間市には比較的自分なりのスタイルを確立している人が多く、自分もそういった部分に興味があるので、自分に合った面白い環境だったのかなと思います。


文学や音楽など様々なジャンルから影響を受ける

 

■今の作風に至るきっかけはなんですか?

 エキゾティズムの感覚は小さい頃から自分の中にあり、昔から中東や中世ヨーロッパの雰囲気がある絵本などが好きでした。身近にあるものとは距離を感じ、「なんだろう、変わってるな」と思うものに魅力や憧れを感じていました。


あとは、陶芸の他に文学や音楽など他ジャンルの影響も大きく受けています。特に、澁澤龍彦という文筆家は、自身の作品執筆の他に評論的な文章も多く執筆しており、シュルレアリスムや幻想美術の作品を体系的に紹介している文章には大変影響を受けました。

■須藤さんはご自身で音楽も制作されていますよね?

音楽は、小さい頃スーパーファミコンの作曲できるソフトと家にあったアコースティックギターなどを使って、子供ながらに作曲の遊びをしていた時代から、今まで続けています。


須藤さんが楽曲制作とギターを担当するバンド「三日月窃盗団」https://mikaduki.bandcamp.com/


最近好きでよく聞くのは、ブラジルの音楽です。ブラジルの音楽はバランス感覚が不思議で、黒人のリズムと西洋人のメロディがかけ合わさったり、コードもメージャーコードやマイナーコードだけでなく、中間的でどっちつかずなコードが多かったりするのですが、こういうパッと見てカテゴライズできないものに惹かれます。そういう曖昧な魅力は解ろうと分析したくなる性分で、そこで気づいた面白さは自分の作品にフィードバックさせたいと思っています。

芸術は、国や時代でスタイルがある程度決まってくると思うのですが、それを逸脱したものに面白みを感じます。色々な要素をブレンドし、既存のフォーマットにとらわれず、一歩踏み出した作品を作りたいです。




■制作でテンションが上がる瞬間はいつですか?

新しいアイディアが閃いた瞬間です。シリーズがマンネリ化してしまっている時に、新しい方向性が掴めた時はテンションが上がります。あとは、窯出しの時もテンションが上がります。陶芸は制作の工程が長く、完成まで1ヶ月程かかります。長い時間をかけて制作し、思っていたよりも良いものができた時は「報われたな」と感じます。

 

内部の装飾がとにかく細かい!

 

■自分の作品の「特にこだわり!」というポイントはどこですか?

特にこだわっている部分は、細部の作り込みです。「陶芸でこんな細かいものも作れるんだ!」と言われた時はやっぱり嬉しいです。最初は中はくり抜いてなかったのですが、ある時「内側くり抜いたら中も作り込めるじゃん!」と思い、始めてみました。全体的に細かな装飾を施しているので、色々な角度から回り込んで見たり、置く向きを変えたり、立体作品ならではの楽しみ方もできると思います。「神は細部に宿る」を作品で目指したいです。

■立体作品の魅力はなんだと思いますか?

やはり、ものそのものが持つ存在感は何にも代え難いものです。焼き物はとても原始的な表現技法で、日本なら縄文時代からあったものです。そういう伝統的なものの価値は普遍的であり、そもそも比較できるものではないですが、いくらテクノロジーが進み、デジタルアートなどが生まれても、焼き物そのものの魅力は他のものでは代理ができません。そういった点では、唯一無二の魅力なのではないかと思います。



■立体作家として大変だと思うことはなんですか?

陶器なので技術的にできること・できないことはどうしてもあります。ちょっと無理してでも挑戦して制作することで、できることを増やしていきたいと思っています。

あとは、土間に作品を焼く窯があるため、制作環境にエアコンを設置することができず、夏は暑さとの戦いです。どうにか工夫しながら暑さを凌いで制作しています。



■作家として今後の目標はなんですか?

歳を取るまで制作を続けていくことです。陶芸以外にも音楽や映像など他のジャンルにも柔軟に挑戦して、発表していけたらと思っています。将来的には、映像作品に陶芸作品を用いたり、自作の音楽を使ったりなど、いろいろな要素を組み合わせてひとつの作品にできたらと思っています。



×

Call for Price

I agree to my email being stored and used to receive the newsletter.